「ナッジ理論」を応用して行動変容を引き起こす

医療や介護の現場で働くスタッフの職場環境改善のためにも、ナッジ理論を応用した取り組みが進んでいます。

「ナッジ理論」とは

ナッジ理論の「ナッジ」とは英語のnudgeで、直訳すると「肘で軽くつつく」「背中をやさしく押す」という意味です。

それが転じて、「ちょっとしたきっかけを与えてよい選択をするように行動変容を促す」方法として、まずは行動経済学の分野で研究対象となりました。

2017年には、この理論の提唱者である経済学者のリチャード・セイラ―博士と、ハーバード大学のキャス・サンスティーン教授が、この理論でノーベル経済学賞を受賞しています。

逐一説明して頭でわかってもらおうとするよりも、より最適な選択ができるようにちょっとしたきっかけを与えてあげたほうがより行動変容につながりやすいのだ、というのがナッジ理論です。大事な点は、無理強いや強制をしないことです。

ナッジ的介入での業務改善

ナッジ理論は、新しい問題解決アプローチです。課題山積で手詰まり感が強い医療・介護の現場において、強制されずにごく自然によい行動がとれる環境が醸成されるナッジ的介入は、残業の削減や医療安全の促進等、職場環境の改善につながることが期待できます。

一例を挙げると、厚生労働省からの働き方改革委託事業として日本看護協会が実施する「看護業務の効率化 先進事例アワード2019」で最優秀賞を受賞した熊本地域医療センターの取り組みが有名です。

看護師のユニフォームを勤務帯により色分ける「ユニフォーム2色制」の導入です。日勤は赤、夜勤は緑と、ユニフォームの色分けをしたところ、勤務者なのか非勤務者、つまり残業で残っているスタッフなのかが一目で見分けられるようになったとのこと。

このことが時間外労働の削減、ひいては離職者がほぼゼロになるという成果を生み、業務がいっそう円滑に回るようになった、と報告されています。

きらめき訪問看護リハビリステーションの取り組み

きらめきの事業所で実際に行っている取り組みを紹介します。

事業所のトイレのスリッパがいつもバラバラ‥。何度も指摘するのも嫌だし‥些細なことだけど、日々働く中では小さいストレスが溜まりますよね?

そこでスタッフ提案でかわいいイラストを貼ったところ、みんなイラストに合わせてスリッパを自然に揃えるようになりました。

ちょっとしたきっかけで行動変容につながっている、まさにナッジ理論です。無理強いや強制をせず、少しの工夫でお互いに気持ちよく働ける職場環境を目指しています。